藤本タツキ短編集「22-26」ネタバレ感想|ナユタと月

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『チェンソーマン』藤本タツキの初期短編集第2弾が発表。

藤本タツキ短編集「22-26」には海中のピアノが繋ぐ少年と人魚の恋『人魚ラプソディ』、芽生えたのは女心か恋心か!? 『目が覚めたら女の子になっていた病』、残酷な運命を背負った妹と兄の物語『予言のナユタ』、絵に懸ける姉妹の愛憎と才能が交錯する『妹の姉』の4作。

藤本タツキ短編集「22-26」ネタバレ感想

人魚ラプソディ

人魚が普通に居る世界。主人公は人間の父親と人魚の母のハーフ。いつも海中に沈んだピアノを弾いていたところ、見知らぬ人魚が近づいてきて。人魚が下半身魚なのに上半身普通に服を着ているとか、強引な世界設定ですが、お話はボーイミーツガールモノでラストはいい感じに終わる。

目が覚めたら女の子になっていた病

主人公がはじめっから女々しいやつっていう設定。

普通は男→女というサプライズイベントを際立たせるために、主人公は男っぽい性格だったり女体に興味しんしんBOYであったりする。変身前は女の子と接点がなかったり地味でモテなかったり。女っていう生き物から遠い。

遠いからこそ女になるっていうサプライズが際立つ。そっちのほうが振り幅が大きくなるからね。

でも、主人公のトシヒデは彼女持ち。リエちゃんっていう可愛い恋人がいる。望めばすぐそこにあるオッパイ。これでは自分が女体になるメリットは無い。

それでいて、リエちゃんのお兄さんにときめいてしまう。リエちゃんのお兄さんは男らしい頼れる兄貴。惚れるのもわかる。もともと女々しいトシヒデだから、心も体も女の子として生きていくのも自然なのかもしれない。

トシヒデを愛するリエちゃんは、トシヒデの幸せを願う。大好きだから幸せになってほしいと思う。リエちゃんも良い女だ。惚れる。

予言のナユタ

ナユタは世界中の魔法使いたちから「世界を滅ぼす悪魔の子」と予言された女の子。ナユタは、予言通りにツノを持ち、母を貫いて生まれた。この世界は現代だが、弱めの魔法が実在するために、予言を信じる団体がいつも「予言の子を殺せ殺せ」と街頭で叫んでいる。そんな環境だが、ナユタの兄ケンジは「どうだろうと俺はナユタを守るよ」と決めている。

姉の姉

主人公をモデルにした裸婦画が母校の玄関に飾られてしまうという冒頭にまずつかまれてしまいました。

不条理劇っぽく進んでいく序盤のつきはなしかたがすごいし。そんな、いくらでも暗くなったっておかしくない起点から、主人公が復讐に燃えてくだんの絵を描いた妹がモデルの裸婦画をしたためんとすることで、シュールな悪夢を『トムとジェリー』みたいなドタバタ的ファンタジーにふる腕力もまたすごい。

姉妹の情念と画家としての能力差があらわになる中盤も気まずすぎて見ていられない緊張感だし。

妹の執筆経緯が明かされて、妹の絵について主人公側からの絵解きがなされ、主人公が画家としての能力や自分の汚い部分を見つめなおして、画家として家族として回答をだしてみせる後半……と、非常に面白く読みました。

終わりに

人魚ラプソディ、目が覚めたら女の子になっていた病、予言のナユタ、妹の姉と短編4本立て。どれも独特の世界観を醸し出して引き込まれる。17-21からの次作本。「予言のナユタ」、ナユタが愛おしい。「妹の姉」、自分に弟や妹がいる人は少なからずグッとくるものがある。

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